チェイサー日記(発掘篇)




全てはその晩、ヤフオクで大した期待もなく「チェイサー」を商品名検索した事に始まる。
本当に何の期待もしていなかった。

それだけに、自分の見ているサムネイル画像の意味に気付いた時の衝撃は並大抵のものではなかったのであった。






一番初め、オークション発見時の写真。
ご覧の通り暗い上に激しくピンボケ、何がなんだか判らない。出品用の写真としては最悪の部類に入るだろう。

それでも商品説明で前期型(S52)のMX41型なのは明示されているので、エクストラカッパーメタリックだと言う事、ついでにホイールキャップまで完備である事は充分過ぎるほど判ってしまった。
さァ大変。


(追記:モニターを液晶に替えたら明るくなったので、現在ではある程度のディティールも見られるのだが、この時のCRTでは暗くて殆ど見えていない。
暗ければ画像補正で明るくすれば良いだけの話なのだが、この時そんな事はこれっぽっちも思い付かなかった辺りに動揺っぷりが偲ばれる。)



リヤビューの写真。これはもっとヒドイ。
フツーから言えば車種さえ定かではない。

それでもそれでも、リアウインドとルーフのラインから4ドアセダンなのは明々白々、微かに光の反射したバッジから、SGツーリングとしか思えない。
あらまぁどうしましょ。





走行・・・37,172km!?
記録簿があるそうなので実走である。

色々と質問しておいたのだが、「メモを会社に忘れてきてしまった」という間抜けな理由により、ついでのつもりで訊いた最落以外の情報は得られず。

やきもきしつつ、オークション終了。
もし誰かが入札したらどうしよう・・・と終了の瞬間までウォッチしていたが、流石にこのピンボケ写真ではアピールに欠け、入札者はなし。

自動で再出品されるか、そうでなくともすぐ再出品されると思っていたが、1日経っても2日経ってもその気配がない。とりあえず出品者アラートを掛けておく。

再出品まで、眠れぬ夜が続く。








4日後、待ちに待った再出品。

写真が新しくなっている。まぁ前の写真があまりにヒドイので当然とは思うが。
まだピンボケだが、これだけ写っていれば充分である。
ひしゃげたバンパーが痛々しい。





写真で見る限りでは塗装も中々キレイなようだ。
リヤウインドウのカーテンが、前オーナーの人となりを偲ばせる。





前回Q&Aで「フル型式を教えて欲しい」と言っておいたのが功を奏し、コーションプレートが明示された。
E-MX41-DEHGEのカラーコード473、ドンピシャリ、である。

車体番号は消してあるが、後日改めてよく見たらなんと2桁番号であった。ド初期型である。







かなりキレイと思われるエンジンルーム。

再出品にあたり、出品者に更に突っ込んだ質問を激しく浴びせてみるが、致命的な欠点はない模様。その代わり、「中々入札がないので、出品を取り消してオートオークションに出品しようかと考えているので、早期終了の際はご容赦下さい」との一文に激しく動揺する。
そんなあーた、そうそういつも直ぐに入札があるもんじゃないでしょう、石の上にも三年、待てば海路の日和あり、果報は寝て待てとか言うではないか・・・等と思いつつも言うわけにはいかず、胃を痛めつつ暇さえあればウォッチを続ける(少しでもアクセスを増やそうという魂胆。セコい)。





内装もキレイなようだ。

結局悩みに悩み、迷いに迷ったが、入札しないで後悔するより入札して後悔する方がイイ!後からキャンセルしてもいいわけだし(少し前からシステムが変わったので、キャンセルすると評価にキズは付くが)と決断して最後の最後、終了2分前に入札。
入札するのであれば落とさなければ意味がない。まず絶対負けないであろう金額で入札するが、予想通りその時点での最高入札者(栃木県在住)は敵ではなかった。

正確な落札価格は伏せるが、ヒントを出すならばヤフオクにおいて「自動車車体」よりも「部品取り車」で出品した方が得をする価格であった。

(注:「自動車車体」で出品すると出品料500円+落札手数料3,000円を取られるが、「部品取り車」は「パーツ」と見なされるので出品料10円+手数料3%で済む。)








無事落札したが、まずは現車確認しなければならない。最初からそういう条件であったし、こちらとしても見もしないで買うというのは幾らなんでも不安である。いくら(クルマとしては)安いとはいえ。
しかしながら、出品地は三重県
・・・三重県てどこだっけ?名古屋の先?何時間かかるの?列車で逝って・・・6〜7時間?
かかしながら、落札翌週はよりによって土曜休日買上げ、しかも2勤。おまけに要員的に休めない。

ふとここで、かつて聞いた不死身の男・DT50氏の武勇伝のひとつが脳裏に浮かんだ。彼は言った、「横須賀―名古屋間をスクーターで移動したことがある」、と―――

スクーター(125cc90cc)で横須賀から名古屋まで逝けるのであれば、乗用車(2,000cc)で真岡から三重まで逝けない筈はあるまい?


そして土曜日から日曜日に替わった頃、ワタシは仕事を終えて一服する同僚に一足先に帰る旨を告げた。
クラタク号は日帰り往復1,200キロの道のりに向け、東北道へ乗り入れたのであった。

途中、静岡の先辺り(どこだか忘れた)でふと気が付くと、オドメーターが[ 199998 ]を示しているではないか。
慌ててバッグからカメラを取り出すが、考えたら走行中であるのでそのままではオドにスピードメーターの針が重なってしまう。60キロ以下に落とせばいいが、深夜の高速、しかも追越車線ついでにトンネル区間でそんな事をするのは自殺行為である。仕方ないので思いっきりアクセルを踏み込み、必死で撮った写真が左である(よく考えると自殺行為なのはどっちも一緒だ)。





途中何度も休憩したが、翌朝8時には三重県に無事到着。
名古屋を過ぎてからが異様に長く感じたのは何故だろう。

車両の保管場所である出品者の知り合いの板金屋さんに、日曜の朝っぱらからお邪魔する。番犬にさっそく吠えられる。
板金屋のご主人は消防団の寄り合いがあるので出掛ける・・・というので、一人でじっくりチェックさせていただく。とは言えこちらもあまり時間がないので、帰りの時は入れ違いになってしまう事が予想された。帰る時はロックとかしときますか、キーはお宅の奥さんにでも?と訊くと、
「キーもつけたままでそのまま帰っちゃっていいですよ、こんなクルマ誰も盗まないし」
・・・ご尤も。

写真でもキレイそうに見えたし、メールでも目立つ錆等はないようだと聞いていたが・・・予想以上のキレイさである。
フロントの傷を除いて、腐りはおろか錆すら殆ど見受けられない。走行距離が少ないのもさることながら、車庫保管車であったのは明らか。
ボデーも大部分ストレートの模様。





バッテリーが弱っていて、ジャンプコードを繋がないとエンジンが掛からない。
もっともコードを繋いだところで一発で掛かるわけではなく、アクセルを何度か煽ってやるとようやっと掛かるが、アイドリング中も時々ブツブツと不平を述べる。
そうっと吹かしてやれば何とか吹けるが、ガバッと踏み込むと息つきを起こす。

発見当初はエンジン不動で、燃料系に溜まったガム質のガソリンを洗浄したら掛かるようになった、との事。恐らくはまだそれが取り切れていないか、燃料タンクの錆でも詰まっているのであろうと楽観的に判断。





動作はともかく、エンジンルームの美しさも驚くばかり。
クラタク号よりキレイなのは明らかだ。

よく写っていないが、バッテリーもかなりの年代モノ。弱っていてもむべなるかな。





下回りのキレイさがまた驚きであった。
恐らく、ウチで一番新しいクラウン(H10式)よりキレイだろう。






ただ、フロントの損傷は思ったより酷かった。
「凹みはバンパーのみ」と聞いていたが、実際はエプロンの他フロントパネル本体も下部がめり込んでいた。グリルの逆スラントっぷりから、めり込みようが見て取れる(本来グリルの前面はほぼ垂直である)。

もっともワタシは見慣れていてラインをよく知っていたので遠目に見ただけでもすぐ判ったが、知らない人ならば「元々こんなモン」と思っても不思議はない。そんなレベル。





中央のフロントパネルサポート(丸い穴があいている)の下部が捩じくれてしまっているのが判るだろうか。

結構な衝撃だったと思うのだが、奇跡的にもグリルは取り付け部含めて全く割れていなかった。





バンパーもベコベコだが、エプロンもかなり曲がっている。
追突でもしたのだろうか?

アイドリングさせたままあちこちチェック。ヒーターだ(寒いし)クーラーだ(ちゃんとガスが入っている!)パワステだ(軽っ)ミッションだ(シフトショックはOK)とやっているうち、エンジンが急にグズり出したかと思うとストンと停まってしまった。
それっきり何度クランキングしてもエンジン掛からず。

そうこうしているうちに時間がなくなってしまったので、仕方なく板金屋の奥さんに「エンジン廻しといたら勝手に停まっちまいましてそれっきり掛からないですスイマセン」と声をかけて帰路へ。
何だか壊して逃げ帰るようだが致し方ない。

しかし後日談によると、その少し後に帰って来た板金屋のご主人は当たり前のようにエンジン掛けて移動したとの事(出品者経由で後からエンコしてたと聞いてビックリしたらしい)。





(←よく見えないが、199,999キロで撮り損ねた一枚。)

10時頃には元来た道を帰り始めた。、途中で赤福(伊勢土産)とうなぎパイ(浜名湖土産)を買い、途中仮眠しようとしたがちっとも眠れず、東名では軽い渋滞に巻き込まれたりしつつも、午後4時頃には何とか帰還。予想よりは疲れなかった・・・がそれでも十二分に疲れた(当たり前だ)。

またまたよりによって翌日の朝が早いのでそのまま寝たかったが、伍角号のタイアをスタッドレスに換えていなかったのがどうにも気になっていたので、疲れた身体に鞭打ってホイール4本を積み込み、近所のスタンドで交換してもらう(自分で交換する気力がある筈はない)。

そうして翌朝起きてみたらなんと大雪
ワタシの勤怠の要員7名なのであるが、定時でちゃんと来たのはワタシ含めて3人だけ。朝スタッドレスに履き替えて遅刻したのが3人、スタッドレスだったけど早く出てこなかったので渋滞のアオリで遅れたのが1人、残る1人は夏タイヤでハマって結局休み。
嗚呼アホらしい。俺のがよっぽど休みたかったわっっ!!






発掘篇 路上復帰篇 路上抗争篇

資料室 チェイサーTOP HOME